貴方の知らない撹拌の世界 ~よりよく混ぜて、よりよいプロセスに~

初級コースその3:
「粘り気」の単位が粘度

初回の講座で「混ぜたいモノを知ろう」ということをお伝えしましたが、今回はその中でも一番重要と言える「粘度」に関してお話をさせていただきます。
流体の特徴をイメージするための重要な指標と言えば、まずは密度と粘度ですね。密度については「えぇと…、アルコール系だから750kg/m3程度で考えよう」というように比較的設定し易いのですが、やっかいなのが粘度なのです。なぜやっかいなのか、その理由を考えてみましょう。

なぜ、粘度の単位に時間のS (秒) が入っているのか?

水の粘度μ(ミュー)は20°Cで1センチポイズ(cP)です。1cPをSI単位で示すと、1ミリパスカル秒(mPa・s)となり、その千倍が1パスカル秒(Pa・s)です。例えば、マヨネーズの粘度は1~2Pa・sと言われています。
「そうか!粘度は、応力Paと時間Sの掛け算で決まるのか、すっきりー♪」と思いきや、ここである疑問が生じます。液体のネバネバ状態を示すだけの粘度の単位に、どうして時間を示すSが入っているのでしょうか?皆さんは疑問に思いませんか?
この問いに対する回答を、簡単に結論だけ申し上げると以下の通りとなります。
「化学、食品、化粧品、塗料などの産業界で取り扱う流体には、外部環境の変化によりその粘り気を大きく変化させる『やっかいなもの』が多くいるから。」

ニュートンさんの教えに逆らう反逆児「非ニュートン流体」

そうです、流体の中には環境により「見かけの粘度」を大きく変えるものが多く存在するのです。その外部環境が、「せん断速度(=速度勾配、ずり速度とも言う)」であり、そこに時間のSが潜んでいるのです。

流体力学でよく使われる2枚板の間の流体のせん断応力とせん断速度のモデルをトランプの絵で表すと、ニュートンの式は以下の通りとなります。単位の中に、ちゃんと時間の秒Sがあることが分かりますね。

この式からも明らかなように、粘度μとは、せん断応力とせん断速度の比を示しており、この比が一定、つまりせん断速度が変わっても粘度が変化しないものが「ニュートン流体」と呼ばれ、代表的なものに水や水飴、シリコーン等があります。
逆に、この比が一定でない、つまりせん断速度の変化で粘度が変化するものが、反逆児である「非ニュートン流体」なのです。こちらは、マヨネーズやマーガリンなどが代表的です。

反逆児との付き合いには経験とセンスが必要

もう少し踏み込んでみると、反逆児の中にもいろいろなタイプがあるのですが、そこは専門書へ譲るとして…ここで気付いて頂きたいことは、「せん断速度によって流体の見かけ粘度が大きく変わる」と言う事実の怖さです。なぜなら、撹拌槽内の撹拌翼形状や回転数が、そのものズバリ、せん断速度だからです。
すなわち、撹拌槽を設計または使用する場合には、回転数が変わることで液の粘度が大きく変化するということを、重々認識する必要があるということです。
さらに、撹拌槽の中で流動する液体にかかるせん断速度は、槽内で分布をもっています。これはつまり、高速回転する翼近傍と槽内壁面ではそのせん断速度に大きな差があるということであり、ひいては槽内で粘度に大きな差が出てしまうということを意味します。これが、「粘度はやっかいやな~」と言う理由です。

非ニュートン流体は見かけ粘度が変化する

しかし皆さん、心配はご無用です。この反逆児と付き合う方法はあります。彼らと如何に上手くお付き合いをするかがエンジニアの醍醐味でもあり、経験とセンスの問われるところなのです。

ということで、今回はここまで。次回は反逆児との付き合い方について、少し具体的にお話ししましょう。

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