貴方の知らない撹拌の世界 ~よりよく混ぜて、よりよいプロセスに~

初級コースその4:
撹拌槽を巨大な粘度計と考えてみよう

前回、「流体の中には、せん断速度により見かけの粘度を大きく変える『非ニュートン流体』が数多く存在する」こと、そして非ニュートン流体の撹拌では、「撹拌翼の形状や回転数により、撹拌槽内でも液の粘度に大きな差が出てしまうため、付き合い方には経験とセンスが不可欠」であることをお伝えしました。
さて、今回はそんなやっかいな粘度との付き合い方について、もう少し具体的にお話しさせていただきます。

粘度って、誰が、どんな定義で決めているの?

ところで、世間で言われている粘度って、誰がどんな定義で決めているのでしょうか?そこで、まずは原点にもどって、粘度が通常どのような計測器でどのように測られているかをご説明しましょう。
粘度の計測器、つまり粘度計にもいろいろな種類がありますが、一般的には『回転型粘度計』が多く用いられています。その測定手順は、

1.ビーカーの中に液を入れ、その粘り具合に応じた回転ロータを選び、液の中に浸けます。
2.粘度計の測定レンジに合った回転数で回転させて、その抵抗(トルク)を計測します。
3.あらかじめ検定した抵抗曲線から、回転数とトルクを因子として粘度へ数値変換したものが表示されます。

簡単に言えば、計測器メーカーさんが「このロータを△△回転させている時、この程度のトルクが出る液の粘度は◎◎である!」という社内のデータを基に、トルクを粘度へ変換しているのです。この原理は、ばね式の古いアナログ型でも、歪み検知式の最新デジタル型でも変わりません。

粘度計では、ロータと回転数を選ぶ必要がある

さて、ここで気付いていただきたいポイントが、2つあります。

ポイントその1.
ロータと回転数を選ぶと言うことは、測定時の「せん断速度」を決めることである。

実際に測定経験のある方はご存知でしょうが、粘度計には複数のロータが付属しています。さらに同じロータでも、その抵抗レンジ内であれば複数の回転数の中から選べます。つまり、ロータの種類と回転数を選ぶことは、測定時のせん断速度を決めていることそのものなのです。
当然、水飴のようなニュートン流体では粘度がせん断速度に依存しないので、どの条件でも理論上は同じ粘度になります。しかし、前回の講座で説明したとおり、非ニュートン流体ではロータ種類や回転数の選び方次第で測定粘度が異なることになってしまうのです。
では、どの粘度が真の粘度なのでしょうか?

…その答えは、どの粘度もそれぞれのせん断速度での粘度と言う意味では正しい粘度なのです。ですから、非ニュートン流体の粘度は「見かけ粘度」と言われています。そして、その測定時には以下の太字部分のように、条件を付記するというお約束があるのです。

液の見かけ粘度=◎◎Pa・s
(液温◇◇℃、××型回転粘度計で**号ロータの△△rpm での粘度)

ポイントその2.
粘度計ロータの回転抵抗と、撹拌槽の消費動力って似てませんか?

粘度計は、回転しているロータの抵抗から粘度を算出していることが解りました。
それってつまり、皆さんが現場で使用されている撹拌槽の消費動力と原理的には同じではないでしょうか?

粘度計の場合: ロータの種類×回転数 ⇒ トルク ⇒ 粘度
撹拌槽の場合: 撹拌翼の種類×回転数 ⇒ トルク ⇒ 動力

撹拌槽の回転数と消費動力から、液の粘度変化を知る

と言うことは・・・・

そうです!運転中の撹拌槽の回転数と消費動力を監視すれば、撹拌槽内の液の粘度変化を知ることができるのです。
研究室の粘度計では、300℃、50気圧で重合反応しているポリマー液の粘度を計測することはできませんが、「撹拌槽が巨大な高温・高圧用の回転型粘度計である」と意識するだけで、反応進行中の粘度を消費動力の変化から推定可能となるのです。

さらに、運転中の撹拌槽の回転数を少しだけ上下させてその動力変化を見ただけで、撹拌中の流体の多くの情報(ニュートン流体か非ニュートン流体か?乱流か?層流か?邪魔板はあるか?)を得ることができます。
事務所にもどって大げさな流体解析をせずとも、現場で電卓をちょいちょいと叩いて四則計算で診断できるのです。

このあたりをいかに素早く見極められるかが、撹拌エンジニアとしての手腕の見せ所でもあります。その秘訣は、次回にご紹介しましょう。

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