Professionalism 信念を持って作り上げるジャパン
クオリティ
~ 世界をリードする現地工事 ~

02 信念を持って作り上げるジャパンクオリティ 信念を持って作り上げるジャパンクオリティ
ものづくり Craftsmanship

当社では、 撹拌プロセスに近接するセグメントの製品として、 「蒸留・抽出設備」も取り扱っております。 昭和40年代から「現地工事」も手がけるようになり、 多数の実績を積み上げて参りました。 さらに、 近年はこの強みを活かした「撹拌プラントの現地工事」への取り組みも開始しております。

設備メーカーである当社がなぜ現地工事を手がけるのか。 それはお客様にとってどのようなメリットになり得るのか。

当社製造部 工事グループ主任技師の漆舘に話を聞きました。

現地工事は、「当たり前」のサービス

昭和40年代前半というと、 当社が撹拌事業を立ち上げる10年以上も前ですね。 そもそも、 なぜ設備メーカーである当社が、 蒸留事業で現地工事を手がけるようになったのでしょうか。

当社の蒸留技術は、 高度成長期に海外の最新技術を探し出し、 技術提携・導入をするなどして培ってきたものが基礎になっています。 実はこの時代は、 蒸留設備メーカーが現地工事を実施するのはごく普通のことでした。 中でも当社は、 より効率的に蒸留プロセスを進めるための充填設備やインターナルのご提案を得意としてきた歴史があります。 当社の規則充填物SFLOW®はその代表的なソリューションです。

もちろん、 充填物やインターナルのみならず、 蒸留塔やリボイラーなどの蒸留設備もお客様にご提案していますが、 現地工事を我々が手がけることで、 私共メーカー側としては、 設備をお客様に納めるところ止まりではなく、 プラントの立ち上げまでを見据えたより長いスパンで、 より柔軟に段取りを考えられますし、 お客様側としてはメーカーに工事まで一任できるといった安心感があるわけですから、 当時からお互いに大きなメリットがあったのだと思います。

しかし現在では、 充填物を製造する国内の設備メーカーで現地工事を手がけているのは当社だけですね。

そうなんです。 プラントの立ち上げには、 土建屋さんや鳶さん、 配管屋さんなど、 実に様々な人々が関わっています。 それを一つのチームとしてまとめ上げ、 さらに安全衛生法、 建築基準法、 消防法、 高圧ガス保安法などの各種法令などもしっかりと意識をしながら、 工期を遵守して作業を進めないといけませんので、 プロジェクトのマネジメントには大変高度な専門性が求められます。 この数十年のうちに、 プロジェクト工事の専業会社と充填物などの製造メーカーに二分化されましたが、 弊社はこの両方を持ち合わせた唯一の蒸留プラントメーカーとして存在しております。

こういう経緯がありますので、 「設計からプラント立ち上げまでを一気通貫でお任せ頂ける」という当社の強みは、 実はある意味「当社がこれまで普通にやって来たこと」「当たり前のこと」なんですね。 お客様に大きなメリットを提供することができる現地工事への取り組みを、 当社の伝統的なサービスの一つとして、 今後も続けていきたいと考えています。

設備メーカーが現地工事をする、最大のメリットとは?

工事を専門にしている業者も多くあるわけですが、 どういう場合に設備メーカーである当社に声がかかるのでしょうか。

「段取り八分」という言葉がありますが、 工事ってまさにそういうものです。 うまくいくのもいかないのも、 準備次第ということですね。 専門業者には幅広いプロセスの工事に対応してきた経験値という強みがあると思いますが、 「段取り八分」の真価が発揮されるのは「設備をよく知っているメーカー」、 つまり我々が工事をする時だと思うんです。

そのココロは、 「設計の段階から工事を見据えながら作業を進められる」、 ということに尽きます。 工事専門業者はメーカーの設計・製造の領域にはどうやっても立ち入ることは出来ないですからね。 工事現場での作業の流れ、 スタッフの立ち回りまで含めた設計・製造が行えるというのは、 長年にわたり現地工事に取り組んできた設備メーカーである当社だからこそ。 これにより、 工期の面でも予算の面でも、 お客様に多大なメリットを提供できているのだと、 自信を持って言うことができます。

長年の現地工事の経験に根ざした、 設計・製造プロセスへのフィードバックの積み重ねがある、 ということですね。

はい。 その最たる例として、 とある会社さんの蒸発缶の改造案件のエピソードがあります。 この工事、 最初に言われたのが、 通常二週間かかるところを10日でやってくれと。 で、 いざ始めてみたらまぁうまくいかないわけです(笑)。 蒸発缶というのは圧力容器の中にプレート式の熱交換器が無数に入っているんですが、 この時は200枚くらいでしたかね。 200kgくらいのプレートを、 直径6メートル、 高さ20mの容器に45トンクレーンで吊って一枚ずつ入れていくんです。 ちょっと強風が吹くと、 プレートがピューって煽られて。 作業中断です。 工期も短い中で、 本当に大変な作業でした。 この現場が私の結婚式の丁度1ヶ月前で、 お陰でだいぶ痩せまして…それはよかったんですが(笑)、 でも、 今後のことを考えると、 さすがにこれはどうにかしないと、 と思いました。

風が吹く中でクレーンが200往復するわけです。 もちろん安全には万全を期していますが、 試行回数が増えるほど潜在的なリスクは高まります。 これって、 改善できないかと考えたわけです。 そこで出てきたのが、 熱交換器のブロック化というアイディアです。 プレートを数十枚単位で一つのブロックとして予め組み上げ、 一気に運び込むわけです。 ところが、 蒸発缶って法律で言うところの第一種圧力容器なんですよね。 色々と仕様が決まっているわけですが、 何か変える時には当然、 都度、 役所への確認が必要になります。 そこで関係者と足繁く通いまして、 こういうこと(ブロック化)をしたい、 という折衝を続けました。 もちろん、 工事の人間である私だけでは完結しませんから、 設計の人間と一丸となってやりました。

一体提案でない場合、 お客様が潜在的なリスクを負わざるを得ない状況になるということですね。

で、 どうなったかというと、 大変な手間はかかりましたけれど、 クレーンで吊る回数がなんと6回になったんですよ(笑)200回から6回です。 これは現場にいるからこそ、 できたことですね。 工期は短くなるわ、 現場もより安全に作業できるわ、 これはお客様にとっても大きなメリットとなりました。 こういった日々の改善の積み重ねで今があると思いますし、 これからも、 お客様にどんな価値を提供できるかを、 常に考えるようにしていきたいですね。

実は今、 面白い取り組みを始めていまして、 これまで蒸留の現地工事がメインだったのですが、 撹拌でもパイロット案件の現地工事を幾つかやらせてもらっています。 蒸留で培った我々の強みが、 当社の得意とする撹拌事業とどのようなシナジーを起こせるか。 この取り組みを、 今後も拡大していけるといいですね。

“技術力はあって当たり前。 大切なのは、現場力。”

国内・海外問わず飛び回っていると聞きました。

規則充填物の入れ方をレクチャーする技術指導員として、 海外にたびたび出かけています。 取り扱う蒸留塔の原料も本当に様々で、 なかには99.999・・・・・って9が何桁も並ぶくらいの高純度の原料を扱うこともあります。

それとは別に、 これもまた蒸発缶の案件なのですが、 先年タイに行った際に日本基準であれこれ言っていたら、 現場の工事の方々に嫌われちゃって。 当時、 その工場は同じタイミングで様々なプロセスの設備改造をしようとしているところで、 フィンランドやスペイン、 中国、 いろんな国から私と同じようなスーパーバイザーが来ていたんですね。 で、 彼らがヘルメットとTシャツみたいな服装で居るのに、 私だけビシっと安全帯や酸素濃度計付けて、 細かく指示を出して日本スタイルでやったもんだから、 やっぱりめんどくさく見えちゃったんでしょうね。 怒って帰っちゃう方もいたり。

でも、 私はなんと言われようが、 最初に基礎の位置をきちっと出して、 レベル(水平)も出して、 ってやったわけです。 早く建設始めたい周囲のプレッシャーの中で、 一人で地べたを這いずり回りながら徹底的に。 そうすると、 最初にきっちりと手順を踏んでいたお蔭で、 その後の作業がみるみる順調に進んでいき、 現地の人たちの考え方も徐々に好意的なものに変わっていくんです。 当然、 最後にビシっと設備の位置が決まって、 垂直も出るわけです。 これはもう「いえーい!ハイタッチ!」です。 喧嘩していたメンバーたちと飲みに行って、 みんなおごりました(笑)。

帰国後、 現地の工場長の言葉を人づてに聞いたのですが、 「日本人が良いのではなく、 彼の仕事が良かったんだ。 」と言っていたそうです。 これには思わず涙が出そうになりましたね。 誰かの何かの役に立てたと思えるこの瞬間が、 この仕事の醍醐味です。 メイドインジャパンは良いものだという世界共通の認識がありますが、 その根っこには一つ一つの工程にそれぞれきちんとした理由のある、 日本独自のやり方があるわけで。 日本の技術者達一人ひとりの気が遠くなるほどの試行錯誤の積み重ねで、 メイドインジャパンへの信頼があるんですよね。 その最前線の現場で、 これからも達成感のある仕事をしたいですね。

人間力に裏打ちされた現場力、 でしょうか。 喧嘩しても最後は仲良く、 というのは仕事のやり方として、 ある意味理想的なものですね。 最後に、 今後当社の現地工事では、 どういったチャレンジをしていくべきでしょうか。

安全のために、 どう変えていくか、 何を変えていくか。 作業をシンプルにすることで、 安全を突き詰めていきたい。 変化にはもちろんリスクや労力がつきものですが、 熱交換器プレートのユニット化のように、 大きな改善ができることがまだまだあると思います。

私には、 「段取り八分」以外にも仕事の上で大事にしている信念があります。 それは「修身・斉家・治国・平天下(しゅうしんせいかちこくへいてんか)※」というものです。 本来は儒教の教えですが、 この場合は「自分自身がきっちりと頑張って、 家族を大切にしないと仕事にも打ち込めないし会社も良くならない」というような考え方となるでしょうか。 現状維持では見いだせないものを探し出し、 それを実行し、 より良く変えていく努力を絶え間なく続けていく、 それが重要だと思っています。

また、 先にも触れましたが、 もう一つのチャレンジとして、 撹拌の案件でも現地工事への取り組みを始めています。 今後はこのシナジーをより大きなものにしていきたいですね。 これを読まれたお客様には、 ぜひ現地工事含めて、 撹拌案件のご相談をいただければと思います(笑)。

※修身・斉家・治国・平天下:天下を平らかに治めるには、 まず自分の行いを正しくし、 次に家庭を整え、 次に国を治めて次に天下を平らかにするような順序に従うべきである、 という儒教の教え。

漆舘 誠

当社のプロフェッショナル

漆舘 誠

製造部 工事グループ 主任技師

住友重機械工業に入社後、 石炭火力発電所の排ガス環境設備、 製紙プラント、 原子力発電所など、 様々な大規模施設の建設およびメンテナンスを手がけた後、 蒸留設備の改造・建設に業務の軸足を移す。 2014年、 組織改編により住友重機械プロセス機器に参画後も現地工事を専門とし、 国内外を飛び回る多忙な日々を送る。
建設関係の保有資格数はグループ最多の35種類。 現在、 次の国家資格取得に向け取組み中。

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